PERMA / ポジティブ心理学: ウェルビーイングの状態とは?
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Summary
ウェルビーイング情報技術(IT)を実装するに当たり、ウェルビーイング状態を把握する必要がある。
心理学では、病的な状態の治療に留まらず、人間の健全な状態の促進を学問領域とするポジティブ心理学という学問分野がある。
ポジティブ心理学の推進者の一人であるマーティン・セリグマン(Martin Seligman)は、心理学の領域でPERMAモデルを提唱している。即ち、P(Positive emotion/ポジティブ感情)、E(Engagement/物事への積極的な関わり)、R(Relationship/他者とのよい関係)、 M(Meaning/人生の意義の自覚)、および A(Accomplishment/達成感)
モデルを明確にすることで、各要素をどう促進していくかという技術的命題を検討することが可能となる。
人のウェルビーイング状態
情報技術(IT)的なウェルビーイングを促進を考えるに当たって、人のウェルビーイングがどのような状態であるかを検討する必要がある。医学的に機能障害ないことも条件の一つである。他にも、明るい感情の体験、人生の意義づけ、能力の発揮、自己決定感があることもウェルビーイング状態につながっていると考えられる。
一般的にウェルビーイング情報技術(IT)というと、医学的な病気の治療ではなく、心身の健康を促進していくという意味合いで使われる場合が多い。医療分野で求められる厳密性や安全性は他の分野に比べて特に厳しく規定されており、別の分野と考えた方が扱いやすい。この分野は医療IT或いはMeditechと呼ばれる。本稿でも医療IT/Meditechではなく、心身の健康促進について考察する。
前述の通り、ウェルビーイング状態といっても多くの側面があり、このモデルとして本稿では PERMAを紹介する。
ポジティブ心理学
心理学では、病的な状態の治療に留まらず、人間の健全な心理状態の促進を学問領域とするポジティブ心理学という学問分野がある。
「ポジティブ心理学」という言葉を最初に使ったのは、5段階欲求説(自己実現理論)を唱えたアブラハム・マズローと言われる。マズローは自己実現、創造性、価値、美、至高経験、倫理など、従来の心理学が取り扱ってこなかった、より人間的な心理の研究を行い、これを人間性心理学と呼んだ。
ポジティブ心理学に脚光を浴びせ発展させたマーティン・セリグマンは、初期には学習性無力感の研究を行っていた。セリグマンは機能障害について研究を進めていたが、心理学は人間の不幸な状態を克服する以外にも、通常の状態からより幸福になるにはどうしたら良いかという問題も心理学で扱いたいという考えを深めていった。セリグマンは1998年アメリカ心理学会の会長に選ばれた。その後、ポジティブ心理学は学術誌の特集を経て、大きく注目を集めるようになった。
ポジティブ心理学と混同されやすい概念としてポジティブシンキングがある。ポジティブシンキングは、前向きに物事を考えればうまく行くという考え方である。しかし、前向きに物事を考えることとうまく行くことの相関は証明されていないため、疑似科学という批判がある。
ポジティブ心理学は、ポジティブシンキングとは異なり、心理学的な論証を根拠としており、ウェルビーイング技術を考える上で参考にすることができる。
PERMA
ポジティブ心理学に脚光を浴びせたセリグマンはウェルビーイング状態の概念として PERMA を考案した。即ち、P(Positive emotion/明るい感情)、E(Engagement/物事への積極的な関わり)、R(Relationship/他者とのよい関係)、 M(Meaning/人生の意義の自覚)、および A(Accomplishment/達成感)である。
P(Positive emotion/明るい感情)
嬉しい、面白い、楽しい、感動、感激、感謝、希望・・・
E(Engagement/物事への積極的な関わり)
没頭、没入、夢中、熱中・・・
R(Relationship/他者とのよい関係)
援助、協力、意思疎通・・・
M(Meaning/人生の意義の自覚)
人生の意義、社会貢献、利他行為、宗教・・・
A(Accomplishment/達成感)
達成、成果、自己効力感・・・
PERMAについては金沢工業大学に測定できるページがあります。
Well-Being Glossary Index
ウェルビーイング情報技術(IT)とは? 関連コンセプトのマトメ
Ubiquitous Computing 1991, Value Sensitive Design 1996, Affective Computing 1997, Persuasive Technology 1998, IoT 1999, Attentive User Interface 2003, Emotional Design 2004, Personal Informatics 2008, Positive Computing,
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ストレスとは?: 快ストレス/不快ストレス, ストレス無害説(Willpower/ウィルパワー), ストレス脆弱性モデル(stress vulnerability model),
ストレス対応 促進方法: ストレスコーピングとは?, ストレス対処アプリケーション例 SELF/KOKO/Simple Habit/Moodrise, ポジティブコーピング / Proactive Coping Theory,
測定方法: 主観評価: SACL(Stres Aroussal Check List), ストレスバイオマーカー(唾液), 心拍変動(HF/LF), 非接触型(顔画像/表情/声/顔面皮膚温),
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マインドフルネスを促進するには?: アプリケーション例: システムが利用者への働きかけを一方的に行うもの/ 指導者による体験プログラム支援/ システムが利用者とやり取りしマインドフルネスを促進するもの, 設計上の留意事項
ストレスの測定方法: MAAS, FFFMQ, 脳波による測定: ヘアバンド型脳波計&瞑想支援アプリ, 瞑想ポッド, ヘアバンド型脳波計&マインドフルネス実践アプリ