Innovation-Japan-2018

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Innovation Japan 2018 組織展示: 青山学院大学 次世代ウェルビーイング

個別適合をめざした統合的人間計測・モデル化技術の構築

この度、当プロジェクトはイノベーションジャパン2018における組織展示に選定されました。同展示会は、大学等の研究成果の社会還元、技術移転及び実用化に向けた産学連携等のマッチング支援を実施する産学連携の国内最大規模の催しです。展示内容は、一昨年より文科省の選定を受け、健康、福祉、教育、スポーツ、技能研修等の分野で個々人に最適なサービスを提供することを目的とした「次世代ウェルビーイング~個別適合をめざした統合的人間計測・モデル化技術の構築~」となります。

社会課題

青山学院大学がセンシングと情報技術を使ってできることがあります。

我々の社会課題を振り返ってみますと、社会保障給付は9年で介護費 2.0倍、医療費 1.4倍に増加すると言われています。また需要の圧倒的な増加の中で、医療、福祉産業、或いは教育・学習産業の労働生産性の低さが指摘されています。労働生産性は従業員一人当たりの付加価値を意味しますので、これが低いことは給与の伸び幅が少ないことを意味しています。

これらの産業は、人間が身体的、精神的、社会的に豊かに暮らしていくために不可欠です。何故、このような社会課題が発生しているのでしょうか。理由の一つとしてヒトをサービス対象とした労働集約型のサービス業であり、サービスを受ける人に対し、個別対応が必要だからと考えることもできます。

我々のプロジェクトは、センサーなどを通じ、個々人から生体データ、動きデータ、環境データを取得し、それを個々人に対する個別対応サービスに活用するシステムをテーマとしています。この対象者に対する個別対応を「個別適合」と呼んでいます。利用者はシステムが自動で判断した最適なサービスを受けることができます。

解決策

全ての人々が良好な状態で生活する社会を目指し、個人に最適なサービスを提供する為にその人から取得したデータを活用

当プロジェクトでは全ての人々が良好な状態で生活する社会を目指し、個々人から取得したデータをその人へ最適なサービスを実現する為に活用する研究をしています。

上記の内容を実現する為には以下の手順が考えられます。

① 対象者を計測
② データの集積及び解析、処理
③ 対象者にフィードバック

情報技術を活用し、個々人に最適なサービスを提供することで、人手に頼らず、費用を抑えながら、各人の健康/医療/福祉/教育/スポーツ/技能研修等の個人向けサービスを充実させることができます。

一方で、ヒトを対象とする為、センシング、情報提供、環境調整等に独特の課題が発生します。

次世代Well-Beingの基本構成と研究課題

[1] 対象者の状態を計測

  • 特に人間を対象とする場合には、装着・設置の容易性やコスト面を意識する必要がある。

[2] ある分野に共通なモデルを導き出し、個々人の特徴、特性に合わせたパラメータ(変数)を設定

  • モデルとは、各種センサ等のどの情報源をどのように解析、処理したら有用な情報に変換できる
    かを数理的に表現したもの。
  • 人間など生体から取得できるデータは多岐に渡る。例えば、睡眠を考えてみても、心拍、呼吸、体表面温度、深部体温、寝返り、いびき等。どのデータをどう処理するか、人間生理的な知見も必要。

[3] 対象者もしくはその環境に働き掛けるアクチュエーション(個別適合)を実施

  • 人間にとって心理的に受け入れやすい情報提供方法や安全かつ効果的な環境調整を検討する必要がある。
    • a. 直接フィードバック
      情報を可視化し、適当な手段を選択し対象者に伝達。
    • b. 環境が自動的に適合
      機器、設備等が対象者に快適な状態に調整
    • c. 関係者に情報提供
      対応できる人物に情報を伝達。

実演展示

[健康] 室内環境、寝床内環境、生体情報計測システム

健康に役立てる為、非接触型センサを用い室内環境、寝床内環境、生体情報を計測し、睡眠の質等を評価するシステムを実演展示します

[福祉] 高齢者転倒検知、咀嚼回数向上システム

福祉を想定し、非接触型センサを用いた見守りシステムの映像展示、市販品を活用し健康指導に繋げる咀嚼回数の可視化システムを実演展示します

教育用ゲーム(グローバル生産, 事業経営シミュレータ)
ゲーム内でグローバル生産、事業経営を学ぶことができるシステムを実演展示します。

[スポーツ] メンタル可視化&運動技能向上(野球,テニス)システム

スポーツの上級者、初心者を想定し、前者にはメンタルを自己管理できるシステム、後者にはウェアラブル機器で即時に運動のフィードバックが得られるシステムを実演展示します。

[技能] 製造業向けAR技能承継システム&AR生け花

製造業向けにAR/VRを用いた塗装技能承継を支援するシステムの映像展示、AR/VRで生け花ができるシステムの実演展示を行います。

[感性] サーモグラフィからのヒトの感性抽出

赤外線サーモグラフィを用いた遠隔・無意識・ ストレス
フリーな生体・感性情報計測技術を展示します。

健康と環境

ポータブル温熱環境計測システム

快適な居室空間実現のための、温熱環境計測、空調制御のセンシングネットワークシステム。居室特性や寝床内気候をモニタリングし省エネと快適な生活、睡眠の環境を実現。データはクラウドに蓄積。フレキシブルなケーブルに多数のセンサを設置し、各居室の運用形態や設備機器の特性にあわせた居室環境のモニタリリングと制御が可能。

睡眠段階推定用観測器の構築

ベッドマットレスの下に敷くセンサで無拘束で睡眠中の生体情報を計測し、その生体情報から一晩の睡眠段階の推移を推定する。また、呼吸状態も同時に計測することができるため、睡眠中の呼吸停止の頻度を求めることも可能。さらに睡眠段階の推移を把握することにより、特別養護施設や企業等での組織的な睡眠習慣の改善や、寝具試作品の評価としても使用可能。

個別適合ウェアラブル冷暖房技術

• 寒さと暑さの不快感を軽減する手首および頸部装着型ウェアラブル冷暖房デバイスの研究開発
• 心拍変動指標解析を用いて、リアルタイムに推定する温冷快適感による個別適合制御手法の研究開発

福祉

マイクロ波ドップラセンサを用いた転倒判別

<目的> 高齢者の転倒を無拘束で検出すること。
<方法> ドップラーセンサの出力を時間-周波数強度に変換し、パターンを学習・認識して判別する。
・ 介護者による早期発見
・ 高齢者見守り型システムへの適用

独居高齢者の転倒は、脱水症や低体温症などで助けを呼ぶことができず、後遺症が残ったり死に至る危険性もある。本システムでは、マイクロ波ドップラセンサを天井に設置することで、高齢者の転倒時の動作を体には何もセンサを設置せずに計測する。計測したデータに対し時間のダイナミクスを考慮した機械学習手法を適用することで、転倒したかどうかを自動的に検出する。転倒が検出された場合は介護担当者に知らせるなどし、転倒後の迅速な対応を支援することができ、転倒にともなう様々な危険から高齢者を守ることができる。

咀嚼回数向上を支援するシステム

目的:食事中にリアルタイムでフィードバックするこ
とで、咀嚼回数を増加させる
方法:
1.音声の取得
2.音声信号送信
3.咀嚼音・発話検出アルゴリズム
4.咀嚼回数や発話時

結果:
 咀嚼回数93%、発話時間±5秒の精度で抽出可
 食事中フィードバックで咀嚼回数20%増加

後期高齢者の健康診断では、食の虚弱を調査する咀嚼機能評価が重要であるが、一口あたりの咀嚼回数は唯一補えない調査項目。専用ディバイスで咀嚼回数を測定する既存品はあるが、本研究では他製品に先駆けて、市販の骨伝導マイクとクラウドDBを利用し、①精度、②拡張性、③個々人の差異の吸収を実現した。

スポーツ

スポーツ選手が競技力を高めるには、① 肉体的能力の定量表現・変化記録、② アドバイスの機会の増加と早期反映、③精神的能力が必要です。一方、初心者にとっては ①肉体的能力の定量表現と可視化、②アドバイスの機会の増加と可視化が必要になります。本展示では、上級者向けとして、その時のメンタル面を数値として可視化するディバイス、初心者向けとして、スマートウォッチを身に着けテニスサーブの技術を評価し、改善の助言をしてくれるシステム、同じくスマートウォッチで野球のピッチングの球速を(ボールを投げなくても)推定しフィードバックするシステムを開発した。

スポーツ選手のメンタル状態

  • 競技中、自律神経系活動指標において程よい緊張感とリラックス感のバランスが良いことが好成績に繋がることを解明
  • ↓↓↓↓↓
  • ウェアラブルディバイスを装着し、競技が行われるその場所でその時に、センシング、フィードバックを可能にした。

テニスサーブ上達支援

前腕のひねりとスイング速度からテニスのサーブを解析

  1. 専用デバイス不要(市販品)
  2. その場ですぐにフィードバック(一人で改善可能)
  3. Watchのみ必要

実験の結果、技能が有意に改善

野球ピッチングの球速向上支援

スマートウォッチから得られる速度、加速度、方向等のデータから野球のピッチングを解析

  1. 専用デバイス不要(市販品)
  2. その場ですぐにフィードバック(一人で改善可能)
  3. Watchのみ必要

実験の結果、球速が有意に改善

技能

AR塗装作業訓練

□ KinectとHololensを用い、簡単に実施できるAR塗装作業訓練システム

  • 作業訓練者はHololensと ON/OFFスイッチを装着し、仮想空間内で訓練を行う。
  • Kinectを用いて訓練者の作業動作を取得して可視化。ON/OFFスイッチで道具(スプレーガン)をシミュレート。
  • 得られたデータを元にモデル(同時確率密度関数)を用いて膜厚分布を推定。作業品質を評価
  • 塗料の噴射・塗装物・作業のフィードバックを Hololensを通して3Dモデルとしてリアルタイムで教示

AR生け花

スマートフォンもしくはタブレットPCと安価で無電源の光学マーカを組み合わせて,VR/AR内での生け花支援を実現.本システムのために,伸縮操作で光学マーカが変化する花軸デバイスと,タッチ入力面を利用した剣山デバイスを試作.これらを利用して安価且つ通信環境に依存しない直感的な生け花体験が可能となるアプリケーションを実装.

教育・ゲーム

GMG III
Global Manufacturing Game / グローバル生産ゲーム

企業の海外進出によるグローバル生産についての理解を与えることを目的とした本格的ゲーム。自動車生産が題材で、大学3年生程度の知識水準を持つ人材が対象。プレイヤは、カントリリスク、各国インフラ、市場規模を考慮し、研究開発費・材料費・工場建設費・人件費・法人税・輸送費・関税をコストとし、生産立地、生産品目及び数量、調達先、物流、販売について意思決定する。開発、資源調達、生産計画、生産、販売計画、販売(物流)、決算という各過程が存在する。最新版のGMGIIIでは、全面的に電子化され、個人学習にも対応。実験によって学習効果も高いことが分かった。

BizLator 究極のビジネス教育シミュレータ

6Skillsの向上

  • 会計力
  • 決断力
  • マネジメント力
  • リーダシップ力
  • 分析力
  • 情報収集力

BizLatorは、MBA課程・企業・教育機関などに効果的なビジネス教育を提供するゲーム形式のソフトウェア。Webブラウザ上のシミュレータを使用したカリキュラムを通して、企業経営に必要なスキルを効率的に学ぶ。従来のビジネス教育に使用されるボード式ビジネスゲームと異なり、より実社会に近い柔軟性のある仮想世界を管理者の思うように創りだすことが出来るのもBizLatorの特徴の一つ。

感性工学

顔面サーモグラフィに基づく生体情報・感性情報センシング

従来、生理指標を用いた感性計測は、①計測機器装着時の身体的/心的ストレス、②背景的/長期的な生体情報評価が困難、③個人差の扱いが不定等の問題があった。

本研究では赤外線サーモグラフィを用いた遠隔・無意識・ストレスフリーな生体・感性情報計測技術を提案。

  • 鼻部など特定部位の温度変動には依存せず 顔面全体の温度分布パターンを特徴量とする
  • 可視画像計測では困難であった背景的/ 長期的な生理心理状態の評価が可能
  • 個人性を考慮した個別適応モデルが前提

本技術は、商品・製品の使用感、CM等の映像・書籍からのユーザが受けるの感情・印象の定量的評価などへの応
用が期待される。

フェイシャルマッサージ器、電子書籍、照明、食器洗い洗剤、 次世代テレビ開発、車載機器開発等の研究実施例多数。

産学官連携の取組み

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ご来場は無料で、事前登録が必要となっております。以下のリンク先から事前登録をお願いします。リンク先は JST Fair 2018 というサイトですが、Innovation Japanと同時開催の催しですので、そちらのサイトからご登録ください。
次世代Well-Beingの研究課題
睡眠の質を無拘束評価するシステム